個展『二月革命』を終えて -その1
小倉涌展 Yow Ogura LOWER AKIHABARA.|Exhibition 2018 展覧会情報|
小倉涌 歴史画シリーズ第二弾 個展『二月革命』
LOWER AKIHABARA.
2018年9月22日〜10月6日
個展を終えて早1ヶ月と少し経ってしまいましたが、この間、クラウドファンドのお返し品の発送作業があったり、事務的な用事があったり、色々とタスクがありまして、作品サイトへの作品画像のアップも一昨日やっと済んだというあんばい。次回のシリーズの話をあちこちでしてきたので、個展終えてすぐ、協力してくださる方と会って話したりメールのやり取りをしたりということも。作品サイトへの更新、ステートメント等の英文版はもう、日程がアレなので翻訳家に依頼して作ってもらいました。今回の記事では、重複になりますが、作品サイトやポートフォリオに出したステートメントを掲載していきます。で、次回、他の作家さんの参考になればということで、クラウドファンドを利用してどうだったか経験談を書こうかと思っております。
全体の総括としては、絵画という体裁でこれだけやろうとすればやれることをキッチリ示せて、成功したと思います。個展前にグリーンバーグ批判書いてみたり、藤田嗣治の戦争画について調べてみたことも、今後も歴史画やっていく上でやっておいて良かったなと。
『二月革命』シリーズ全体のステートメント
かつての宗教ネットワークとロシア革命の関係は、今後、日本の各分野でも注目が高まるだろうと考えられる。
- 作者: 下斗米伸夫
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2011/04/19
- メディア: 単行本
- 購入: 3人 クリック: 36回
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- 作者: 下斗米伸夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2017/10/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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構想練るのに、日本語の文章だけ探してたんですが今更ながらそれが非常に悪かった笑。というのは、ロシア正教やロシアメシアニズム、汎スラヴ主義についての書籍はがほとんど無いようで、本探すだけで随分時間をロスした感。こんなに馴染みも無いのに今回のテーマで宗教の部分に焦点を当てるかどうか、調べつつ随分長いこと迷いました。とりあえず縛りとして、マルクスレーニンなどのアイコンは使わない、赤旗は使わない、といった分かりやすい表象を排除することを自分に課してまして、こういう楽なことをするとオリエンタリズムに流れかねないという考えからなのですが。で、なんでテーマを二月革命にしたかというと、前回のマッカーサーシリーズが八月革命だったから、という人との会話上のただの冗談から始まったこの企画。ロシアクラスタでもないし、ソヴィエト史に詳しいわけでもなく、しかし帝政末期ロシアの近代絵画については、子供の頃から美術館に連れられ観て感銘受けてきたし、またエイゼンシュテインの映画は美大生の基礎教養でもありまして、近代ロシアの芸術を取っ掛かりにすることにしました。宗教的側面はですね、一応正教についての本何冊かと、メシアニズムに関する本、下斗米さんの本は読んだけど、あとはもう、見切り発車ですはい。読んでも読んでもキリが無く「よく分からない」としか(ぉぃ
- 作者: 高野雅之
- 出版社/メーカー: 早稲田大学出版部
- 発売日: 1998/08
- メディア: 単行本
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『皆殺しの天使』
背景のイコンは、ロシアの画僧アンドレイ・ルブリョフが描いたものをモチーフにした。
この作品をシリーズ全体の導入の作品と位置づけ。天使の足元にはニガヨモギ。黙示録で「ニガヨモギ」としたのはどうやら誤訳だったようですが、ま、描く前にそれは知ってたけど、とりあえず登場させることに。モチーフにするためにニガヨモギは輸入の種を買いましてね、家でせっせと育てたもんですよ。
ニガヨモギさんです。昨年11月種撒きして育てました。大きいプランターのはもっと勢いよく繁ってます。 pic.twitter.com/F1cu4iB79O
— 涌 (@YOW_) June 3, 2014
ニガヨモギの花が鈴生り中。地味な花ですが。先日頂いたアブサンに、この花が浸けてあったよ。https://t.co/4Vx31lGgum pic.twitter.com/0oBuO11TRl
— 涌 (@YOW_) June 27, 2015
こうしてこの作品は、アブサンの思い出に回収されていくのだった…
『モダニストの船』
ここで描いたのは、ニジンスキー振り付けによる前衛バレエの先駆けである『春の祭典』ですね。マリインスキー・バレエ団の舞台DVDを参考にしました。
- 出版社/メーカー: Bel Air / King International
- 発売日: 2014/11/07
- メディア: Blu-ray
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Rite of Spring. THE RIOTOUS PREMIERE! (from the film "Riot at the Rite" part-2)
まあニジンスキーといえば、山岸涼子さんが昔漫画作品を描いており、私は少女時代にそれで学んでいたんですよね。
- 作者: 山岸凉子
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2008/03/22
- メディア: コミック
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粛清事件としての「哲学の舟」は大学教員や人文学者といったインテリゲンチャーが対象ということだけど、それに含めて良いのか、哲学の舟の少し前にカンディンスキーなどの芸術家が国外亡命してますね。ディアギレフらバレエリュスの場合は、ヨーロッパ公演で回ってる間に革命が起きて、帰国しそびれた、という感じだったようです。つまり、実力行使で国を追放されたというのではない感じ。
『阿呆女の舟』
トルストイは生前から宗教観でも人々に影響を与えていて、理想的なコミュニティを目指す「トルストイ主義」として知られていた。トルストイ主義はロシア革命初期は多くの活動家にも受け入れられていたのと、のちにガンジーにも影響を与え、非暴力主義の抵抗運動へと至った。そこでこの作品でのアンナ・カレーニナは、南アジア系の人物として描いた。
トルストイ主義というのも、それが理想としたのが聖フランチェスコという西洋美術史上でも人気のある聖人、というとっかかりがあったので。
ケシというか園芸種のポピーは、種から育てたけど、日本の温暖で雨の多い気候には馴染まないらしく、高原とかでないと難しいっぽいです。外来種の野生はよく生えてるけど、鉢に移植してもすぐ萎れて、移植は出来ないみたいです。結局、造花を買ったのと、写真資料で描き上げました。
ポピー無事ゲット。昨年は秋から、種を世話したが育たなかった pic.twitter.com/KjZRyWeAHT
— 涌 (@YOW_) April 8, 2015
『ODESSA』
オデッサ階段落ちのオマージュ作品というと欧米では割によくある、らしい、とどなたかのつぶやきを目にして、大作で描く時は、これはまんまやるのでは絶対ダメだな、と。私は映画『アンタッチャブル』くらいしか思いつかなかったりしたけど。乳母車の代わりに、子供の時に日本でのトレチャコフ美術館展で小さい秀作だったけど、観て感銘を受けた『モロゾーワフ人の逮捕』のオマージュにしました。実際は幅5mくらいある大作。
[:500]
これ、なぜ子供の時に感銘したかというと、思想信条の違いで、逮捕され投獄され、処刑される世界の恐ろしさというのをこの時の美術展で教えられたからです。ほか、レーピンの『革命家の逮捕』『ボルガの舟曳きの農奴』などが来てました。
そして、ねずみさん。描いたことないものを描く時は色々心配性になるのですが、当初、ペット用のねずみを飼った方が良いかどうか、かなり真剣に考えてたのですが、留守にしてる間世話は任せられるかなどの問題で、実現せず。まあ、馬といった大型動物ではいざ知らず、こうした小動物は資料見てるだけでなんとかなるもんだなあと学習しました。
17世紀「黒死病の村」をデータ分析してわかった「意外な感染経路」|WIRED.jp https://t.co/Th2z01VytQ
— 涌 (@YOW_) May 31, 2017
「ある村でネズミから人への感染は全体の4分の1に過ぎず、残りは人から人への感染であったと推定」
_φ(・_・ ネズミ描き中
で、この作品では階段はエスカレーターに。これは9年前、同人誌『筑波批評』さんの表紙を描いた時に「エスカレーターで」との注文があったのを思い起こして、エスカレーターにするか石畳にするか、小品で試作的にやってみまして、縞が集中線の効果になることに気がつき、大作ではエスカレーターの方を起用。このオデッサ階段は、集中線がより収束していくように見せるため、上面図では扇型になってます。
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『イコン』
足元に集まる小鳥や狼は、聖フランチェスコを描いた『小鳥への説法』といった宗教画のお約束事からきてます。
このように、今回の二月革命シリーズでは、自分が子供時代〜美術科高校時代〜美大と、ずっと慣れ親しんできた西洋美術史の作品群がかなり大きなとっかかりになってまして、次回、性風俗と法の規制というのを大上段のテーマに据えてやっていくことにしてますが、二月革命とはまた違う方向を模索してみよう、とも思ってます。
それでは、今日はこれにて。
「技巧は技巧を隠す」か?絵画のイリュージョニズムとは何か? -展覧会の感想をTwilogから発掘するシリーズ(五)
前々回、グリーンバーグやアーサー.C.ダントーの『芸術の終焉』を読んでの記事を書いたんですが、これはその追補みたいなものです。
yow.hatenadiary.jp
「技巧は技巧を隠す」とは、元は古代ローマの名言だそうで、どういう経緯の言葉なのか詳細はただいま目下大作制作中で個展が近づいてて忙しいんで、よう調べておりません(ぉぃ ひと段落したら、他の研究者の論文を探して読みたいと思いますが。
先月、東京国立新美術館での「ルーブルの顔」展と、兵庫県立美術館でのプラド美術館展を回りまして、とりあえず、今回は「絵画のイリュージョン性」について再び、実際の観察で検証ということで書きました。前々回の時はまだ画家の記憶で書いてましたから。
ルーブル美術館展、プラド美術館展 (2018年6月)
www.ntv.co.jp
www.artm.pref.hyogo.jp
今日予定の変更があって時間が空くからこれ観たけど、今回は予想通り、わたし的にはそれほど…。まあ、よく運んで持って来たなあというよな、大作の大理石像もあったけどね。ルーブルの所蔵品展というのは定期的にあるが、自分の記憶では、1994年?のルーブル展のラインナップが、一番凄かった
0:33 - 2018年6月29日
美術展回るのがめちゃ久しぶりではある。早く家帰って制作したい。ルーブルの所蔵絵画観ても「私の絵の方が良いやん」としか思わなくて、チャクラが開かない。だがきちんと観るのも勉強なんや。
0:56 - 2018年6月29日
グリーンバーグにまだこだわってるから、ルーブルとプラド、一緒に感想ツイートする
14:24 - 2018年6月30日
先ずルーブル美術館の顔展:出品内容は彫刻半分絵画半分くらいか。ここではとりあえず絵画中心に。まずベラスケスの工房制作によるスペイン王妃肖像。1652年、高さ1.8m程。ベラスケスは宮廷画家だが、細かい再現的描写はせず、一気に素早く描き上げてる。遠目で見らるのを想定してるのもある
19:50 - 2018年6月30日
ルーブル美術館の顔展:グリーンバーグ等が後に具象絵画批判で引用した「技巧は技巧を隠す」、ここでは顔の描写に関しては大体そうだが、髪飾り、スカート裾の銀糸のモール飾りなど、同じ太さの筆で絵の具をポンポンポンと一度乗せたタッチで、「プリマ描き」と言って、筆跡を生かした描かれ方をしてる
19:52 - 2018年6月30日
美術において「技巧は技巧を隠す」というのは、古代ローマの名言だそうで、グリーンバーグ等はこれを引き合いにして、おそらくモダンアートの戦略として、具象絵画を批判した。「絵画のイリュージョン」と言ってたが、
「技巧は技巧を隠す」「絵画のイリュージョン」という時にグリーンバーグ等が念頭してるのは、ベラスケスやレンブラント、エルグレコなどの画家ではなく、もっと後世の新古典派であるアングルやダヴィッド、ジェラールだろう
19:59 - 2018年6月30日 20:04 - 2018年6月30日
絵画批評を展開しつつ、これら18世紀19世紀の一部の絵画しか実際に観てないんじゃないかという問題。憶測だけど「絵画のイリュージョニズム」を発想したきっかけは、古典でなく、シュールレアリズムだったんじゃないかと。
と、先月書いたりした
20:26 - 2018年6月30日
リアリズムの具象絵画で、しかも歴史画をやるアーティストなら、これは誰もが通らざるをえない道なのである。しかもステートメントの前に。
— 涌 (@YOW_) 2018年6月13日
記事書いた:https://t.co/ovJXaQEtxt pic.twitter.com/EDhSZPRcVP
「絵画のイリュージョニズム」という時、念頭されてるのは、非常に限られた絵画様式をイメージしてるのみだろう、という話。もちろん、日本など東アジアの絵画はその眼中に入っていない。
20:30 - 2018年6月30日
批評するのに鑑賞経験を積んでないのはどうなのって、四方八方に言いたいことだけど、
まあ、モダンアートの戦略としてはまぎれもなく大大成功おさめてるので、ほんと良かったね。
20:40 - 2018年6月30日
ルーブルの顔展とプラド展の続きを。改めて「技巧は技巧を隠す」か問題を中心に。
兵庫県立美プラド展でのベラスケスによるスペイン王太子。出入り口の上に掛ける絵だったのもあり、描写がかなりザックリした省略されてる印象。馬の塗り込みも背景も「え、これで宮廷に納品出来たのか」と思ってしまう
20:01 - 2018年7月2日
プラド展:顔の描き方もピンぼけしたようにアッサリしている。そこは小磯良平の手法がしきりに想起された。遠目で見るだけの絵画ということで受注したとは思う。画家も長軸を付けた筆で、キャンバスに近寄らず描いたはず。今の市場での好みだと、具体的に描写されてるのが好まれる傾向にあるから、
20:09 - 2018年7月2日
プラド展:このフェリペ4世像にしても「これだと突き返されるなw」とすぐ思ってしまう。私のただの推測だが、王宮か何かを建造するにあたり、制作を急がせたというのもあるかもしれない。この感想、実物見ないと、画像では分かりにくいけどね。樹の描き方も「えらい荒いなあw」という感じであった
20:16 - 2018年7月2日
プラド展:ベラスケスが、顔の描写で筆致を活かした少しピンボケ気味にするのは、彼のテクニックでもあり、ラスメニーナスもそうだし、今回出ていたこの道化の少年もそう。ここではかなりピンボケ感出してあり、まるで「プロマイドでのソフトフォーカスによる優美さ」の先駆け的なセンスを感じる。
20:39 - 2018年7月2日
ベラスケスは、長軸を筆につけて、画面から離れて描く人で、それによって具体性をぼかした描写や、花びらが揺らめくような柔らかなタッチでの描写を可能にした画家で、今回来た作品よりも良い作品がいっぱいあるからね。名誉のために申しますが。ハハハ。以前、ニューヨークメトロポリタンで観た王女の小さな肖像画(a)なんか、素晴らしかったし、ウィーン美術史美術館展で観た王女や王子の肖像画も良かった。残念ながら、ラスメニーナスは未だ観に行けていない。
ベラスケス。宮廷画家だったが、絵にチャラい感じがまるでしない。細やかな情愛や温かみや優しさが筆や色にこもってる感じ。王女のリボン、髪や襟は軽い浅いタッチで描写、そこに愛らしさが出てる。他、男の肖像でもパッと見て即、巧い!と唸るhttp://t.co/rSnlaVm
— 涌 (@YOW_) 2011年8月20日
プラド展:ベラスケスのこれらの作品は1630〜1650年代で、その前、1500年代の肖像絵画で、衣服の刺繍やタッセルや鎖や宝石といった装飾を具体的に描写する様式を、これまでにも何点か観てきた。これはフェリペ2世の娘と道化の像(1585~88 Sanchez Coello)
21:00 - 2018年7月2日
プラド展:これもこうして写真でみると超絶技巧的に思えるかもしれないが、実物を観察したら「筆致を消す」事には注力はされておらず、タッチの調子は確認できる。以前ウィーン美術史美術館のこちらの肖像(1569年 シャルル9世)も、そんな感じ。具体性は高いが筆致に関しては意識が低いというか
21:06 - 2018年7月2日
ベラスケス、ルーベンス、レンブラント辺りから、うごめくような筆のタッチを生かした絵画技法が出て来たかと。これは確認をちゃんとしたわけではないからはっきりは言えない。
21:10 - 2018年7月2日
この辺の研究論文があるかまだ探して読んでなく、何らかな研究はされてあるはずだが、今のところ自分の推測。
ベラスケスらは、服飾のレースの描画も5段階で言えば2くらいの省略で描いて、具体性よりも筆の勢いを優位に考えている。さっきのフェリペ2世娘やシャルル9世像でも、描写の具体性を5段階で言えば4くらい。5までは描こうとしてない。
21:16 - 2018年7月2日
訂正、ベラスケスらは5段階でほぼ1くらいの省略かも
21:18 - 2018年7月2日
私は「絵画のイリュージョニズム」という批評について、疑問を呈するべく、ただ今こうしたレビューをしています
21:25 - 2018年7月2日
プラド展:1550年頃に描かれたティツアーノの作品。ティツィアーノは、筆致というより絵の具の粒子感に注力して描いてるのが分かる。Wikiで大きな画像拾ったが、それでもまだはっきり分かるものではないが、肌の明暗に粒子感があって、決して滑らかには均さず、土のようなモッサリ感を残してる
21:40 - 2018年7月2日
ティツィアーノ、かなり厚塗りしてますね。
21:41 - 2018年7月2日
プラド展:そんな一方で、1590年〜ベラスケスと同時代の1638年の作品で、筆致を消して滑らかに均して描く絵画様式も出てる。その中で有名な作家が、スルバラン。キャプションによると、プロテスタントの偶像禁止に対抗して、コントラスト強調したカトリックの宗教画画風が要請されたと。
21:47 - 2018年7月2日
コントラスト強調で、まさに「技巧は技巧を隠す」ような、当時の人は「人間の手で描かれたのか」と思ったのかもしれない。
21:50 - 2018年7月2日
ルーブル展:ぐっと時代が下がり1700年代になると、筆致が消えてる平滑で具体性も4〜5くらいの作品が見られた。ジャン=バティスト・グルーズ、ヴィジェ・ルブラン。
ヴィジェ・ルブランは、今まで観た作品にハズレが無いというか「ピントを何処に合わせるか」という先駆的なセンスがある画家で
斜め向いてたら手前の瞳か頬骨辺りでピントが合って、あとはソフトフォーカスでボケて描かれてるという、ほんとにプロマイドの先駆けのような感性、しかも非常に技巧も高い。今回の作品は、クッションの手前のタッセルにもピントが来てて、ちゃんと距離感を考えてるんだよな。
21:58 - 2018年7月2日
22:02 - 2018年7月2日
ルーブル展:まさに「技巧は技巧を隠す」の人が、ドミニク・アングル。これはルイ・フィリップの長男の像。背景の壁画の模様まで手抜かりなく描画の具体性は5。これは非常に構成も良い作品で、別に平滑だから・細かいからというのではなく、本当に腕の良いセンスの高い画家だなあと改めて思った
22:07 - 2018年7月2日
グリーンバーグが注目してたのは、グルーズ、アングルあたりでしょうね。
というお話でした!もうこの辺でお開き!制作に戻っっる
22:09 - 2018年7月2日
とりあえず今回は以上です、他にも色々見所はあったのだけど、制作に戻ります汗
個展『二月革命』9月開催 & MotionGalleryエントリーしました
場所:LOWER AKIHABARA. ( http://lowerakihabara.com/ )
〒101-0031 東京都千代田区東神田1-11-7 東神田M.Kビル1F
日程:2018年9月22日〜10月6日
開廊時間:AM.11:00〜PM.18:30
休廊日:9/23, 24, 30日です。ご注意下さい。
私は、9/22, 10/5, 10/6に在廊しております。
テーマ構想は軽口で始まり禁則で締め上げ
個展『二月革命』やるやる詐欺も幾星霜、前回2012年『マッカーサーの子供たち -八月革命』と個展タイトルに掲げたのを機に、「じゃあ次回は二月革命ですかね〜www」と軽口からスタートさせたこのテーマ!!!
そうです、大上段のアイディアというのはいつも軽口から始まってしまうものなのです。マッカーサーシリーズだってそうでした。
yow.hatenadiary.jp
2009年の冬に大阪のNAMURAであるアートイベントに行った。イベント後の懇親会で、あるキュレーターの方に挨拶をした際に「私、今度マッカーサーのテーマで作品展やりたいと思ってるんですよ」と、これまた単なるハッタリでポロッと口に出して、自分でも内心驚いていた。
言ってみてから「ああ、そうか、自分がやりたいのはこれだ」と思い至った。その時のハッタリも、やはり何か直感が降りたから、というわけだ。
その懇親会の前、イベントでキュレーターの方が「多文化主義」という言葉を頻繁に使っていて、多文化主義について政治哲学の洞察が無い印象だったのだが、そのことで挑戦的な質問をしてみた。会場で目立ちたいが為に。それによる高揚感が、更に懇親会でのハッタリに繋がったのだったと思う。
「革命続きで、革命がお好きなんですか?」と怪訝そうにされたこともあったが、いえ、革命が好きなんじゃなくて、政治思想史の本読んだり勉強するのが好きなんです(マジレス)
さて、8年前の歴史画シリーズ第1弾の時もそうだったが、歴史画シリーズをやるにあたり、私はまず「禁則」を設定することから入った。今回、ロシア革命の名を冠してはいるが、
- プロパガンダ的な表現はせず、抽象性の高さを保たなくてはならない(前回シリーズでも「もっと、show the flagだよ、でないと観てる者が気持ちの持って行きようがないから」といった「助言」が何人かからされたが、そういった表現からは距離をとる方針)
- 今、歴史画をやるには、過去の歴史画に対し何らかな批評性がなくてはならないため、いわゆる共産趣味的な表現とは一線を画さなくてはならない(これは上の禁止事項と重なる)
- ノスタルジーやエスニックなアピールには依らない表現を目指さなくてはならない(つまりオリエンタリズムになるのを注意して避けなくてはならない) 歴史画の歴史的問題については以下を参照に。 yow.hatenadiary.jp
ロシアの宗教の歴史的背景と歴史的美術
- 作者: 下斗米伸夫
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2017/10/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ロシア革命ロシア革命と言っても、広うござんす。何を中心に据えるかの決め手になったのはやはり下斗米伸夫さんの本でしたが、ソビエトの組織化で、ロシア正教に対する異端宗教の地下ネットワークが母体となっていたという記述を読み、その異端は「古儀式派」または「分離派」などと称されるのですが、思えば子供の時、冷戦下ですがよく東側の主だった美術館展が開催されていてそのたびに親に連れて行ってもらっていました。テーマを探ってるうち、子供の時から繰り返し目録でも眺めてきたロシアの有名絵画のいくつかが、この分離派の弾圧を描いた内容だったと改めて思いを致すことになったわけです。何よりも「内心や思想の違いによって、逮捕され投獄されうる」政治体制の恐ろしさというのを、小学生の私に初めて教えてくれたのがこれらの絵画であったため、それだけで私には非常に感慨深いものがあります。
MotionGallryにエントリー。
最初、企業の助成申請を考えてたんですが、個展開催日程がなかなか決められずにいたら機会を逸してしまい、宣伝を兼ねてクラウドファンディングに初めてエントリーすることにしました。
motion-gallery.net
審査もしっかりしているので、こちらに決めました。
6月22日金曜日午前0時からスタートすることに。ここのシステムは、ふるさと納税みたいに、ご寄付の支援に対しお返し品をそれぞれにお届けすることになってます。そのお返し品を用意するのに、なかなか一工夫要りました。お返し品について、こちらの動画でも説明を行っています。
お返し品その1、精巧な複製品
以前お世話になった株式会社プロスキャンさんという、超精巧な印刷が出来る会社にお願いして、A4大の複製を下記の2種類作っていただくことにしました。作者も困ってしまうほど、再現性の高い印刷です。
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お返し品その2、クロッキー画を大量放出
すべて一点物なので、先着順になります。
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お返し品その3、猫を描いたパステル画、注文制作で
↓サンプル作品です。モデルは、うちの麦。このお返し品を選ばれると、毛色とか品種や他の特徴、実在の猫氏の場合は写真をいただくとか、そういったやりとりをメールですることになります。
猫の絵は1万円設定、猫以外の注文制作はすみません、家にモデルが猫しかいないので1万5千円に設定しました。
お返し品その4、原画数点
これ以外にも、外に出したことのない、大昔のイラストも出品することに。
yow.hatenadiary.jp
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MotionGalleryスタッフさんからアドバイスで、記録映像というのも撮りためて、最終的に編集して、公開することになりまして。(八面六臂ですね、大学はデザイン学科ビジュアルデザインを出ていて良かったと、今回ほど思ったこともありません)
その記録映像に、ご希望の場合はお名前を掲載してまいります。
みなさま、なにとぞご支援のほど、よろしくお願いいたします。
歴史画はなぜ叩かれるのか
のっけからこのタイトルだが、少なくとも20世紀半ばからこっち、具象のリアリズム手法で絵画やるとか、さらに歴史画をやるとか言うと
「今更そこになんの可能性が残っていると思ってるの?」
といった反応を受けるのは日常茶飯事で、私は機会を捉えてはこうして各方面に向けてエクスキューズを提示するのは、私のアーティスト人生においても大変意義深く大事な営みになっている。また、具象を描いて活動すること自体の前衛では無い「後衛性」に、何らかな理由が求められるようになったのも、コンセプチュアルアート以降の流れでもある。
20世紀モダンアートの戦略として規定されるイリュージョン絵画について
今日も一日 pic.twitter.com/WcruPffCOd
— 涌 ⚓️歴史画『二月革命』個展9月 (@YOW_) 2018年5月4日
- 作者: クレメントグリーンバーグ,Clement Greenberg,藤枝晃雄
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2005/04/01
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- 作者: アーサー・C・ダントー,山田忠彰,河合大介,原友昭,粂和沙
- 出版社/メーカー: 三元社
- 発売日: 2017/02/09
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個展『二月革命』開催が9月で、迫ってきて、改めてグリーンバーグや特に19世紀ロマン派の美術家を批判する論評などを選んで読んでいったのだが、
- 21世紀からの今後に、具象で古典技法でリアリズムで歴史画絵画を描くこと
「リアリズムでイリュージョニズム的な芸術は、技巧を隠すために技巧を用いてメディアを隠してきた」と糾弾する時の、この「技巧を隠す技巧」というのは元は古代ローマの名言からの引用らしいが、形式主義の絵画批判においては、
- 筆致は極力残さないように、盛り上げず平滑に塗って、(どう仕上げるかは、同じ油彩でも媒剤の調合や基底材の下塗りの仕方などが異なるのだが)
- 写実的に描く油彩技法
についての言葉になっているが(ここからイリュージョニズムという言葉が出てくる)、だからそのタイプの油彩画というのに限定された話なのか。「イリュージョニズム絵画」に対する形式主義による批判に適合しない古典作品は、ざっくりとしたハッチングで描かれる版画にしろ、ベラスケスやレンブラントetc.の特徴、東アジア他の絵画など、いくらでもマッチしない事例があがってくる。20世紀のモダンアートの戦略から遡求的に、絵画の「イリュージョニズム」を位置づけているが、範囲の定まった中の話で、モダンアートの戦略を地固めするがために見える。
『さらに新たなるラオコーンに向かって』では、ロマン派以降の絵画のメディウム(ここは樹脂油や調合油のこと)の役割を抑えられるようになったとあるけど、それはロマン派ではなくて、印象派が一通り過ぎ去って以降の具象絵画(典型としてサルバドール・ダリ)の手法ではないかと疑問を持った。
さらに言えば、私は今回の読書で初めて気が付いたのだが、かの有名な評論『アヴァンギャルドとキッチュ』の一番最後に、グリーンバーグによる追記があって、
私は愕然としているのだが、これが印刷されてより数年後にレーピンが戦場の場面を一度も描いたことがないことを知った。彼はそのような種類の画家ではなかったのである。私は、他の誰かの絵を彼のものだと考えていたのだ。そのことは、19世紀のロシア芸術に関する私の偏狭さを示していた。(1972年)
とある。こうした勘違いからも、彼ら(敢えて複数形)は、たくさんの鑑賞経験を積むことなく印象派以前の西欧絵画というものについての漠然とした印象で批判対象に挙げてるのではないかと、私は前々から穿ってみている。『アヴァンギャルドとキッチュ』でのレーピン批判を読むたび、ちゃんと実物鑑賞したわけじゃなさそうだと思ってきたが、案の定だった。リアリズムと一口に言っても、色んなタイプ、特徴、手法があるものだが、素材、まあメディウムと言ってもいいけど、に対する注意深さや過程は、彼らの存外に形式主義のモダンアートとそう違わないことかもしれない。
それと、この形式主義の批評と、作品の、現実にあるものへの様々な考証の正誤とか観察のありようとか、そういったことは全て今後の絵画に必要なものではないと考えているから、あっさり切り捨てるのだろうか?とりあえずグリーンバーグが「文学の絵画や詩への侵食」を忌み嫌った理由は、19世紀文学のどこら辺にあるのか、目星がよく分からないでいる。フランス語の有名な古典詩を引き合いに出されてもそこにアクセス出来ないところで、「ああこれが、世に言う芸術教養の壁というやつか」と改めて思ったりする。ともかく、グリーンバーグが絵画の「不純さ」として、他のメディア(ここでは媒体やジャンルのこと)から借用した折衷主義と述べているが、その場合も、他のどんなジャンルの芸術もそうであるはずだ。純化された芸術として音楽を挙げられているが、音楽にせよ鳥の鳴き声だったり光が差す様子だったり水の流れだったり、そうした何かを模すということは行われている。
しかし、再現つまりリアリズムというのが描法ではなく、思想や何らかな政治思想の「単に再現しようとするための絵画」を忌み嫌っていたという点では、私にとっても理解できるものではある。
美術にぶるっ!:戦後のコーナー「実験場1950s」も見応えあって楽しかった。一番最初に、原爆の衝撃と治安維持法下の芸術家の敗北感みたいなところで切り取って見せる。それから、砂川闘争や労働組合活動といった左翼系の流れ、古代日本のルーツへの関心の高まり、日本の民俗的な再発見の流れなど
0:05 - 2013年1月15日
美術にぶるっ!:特に、砂川闘争にや労組協調路線の展示は力入れてたような気はする。こういう左翼系芸術ムーブメントってもう今後はあり得ないんだなあ、というのを改めてしみじみと思う。芸術家会報の展示でも、当時のアジ文ではよくこんな内容で人を動員できたなあ、今との隔絶感が湧いてくる
0:13 - 2013年1月15日
美術にぶるっ!:まさに「大きな物語があった」とはこのことだ、と実感する。ああしたアジテーターが、現在もう全く通用しないし人の動員にも役に立たない状況なのだが、このエートスwの変わり様はなんだろーとしみじみと思うなり
0:17 - 2013年1月15日
情報量の違いや、何だかんだでテクノロジーの影響が大きい気もするRT @awajiya: @YOW_ わかる気がします「大きな物語」って,いまの思想文脈の用語でイメージされるような堅固で精緻なもんじゃなく,ひどく粗雑で大味なもので,だけど多くの人がそれに魅せられた.という(…
0:28 - 2013年1月15日
大きな物語は終わったと言いつつ未だ傾向は全然あると思いますRT @awajiya: YOW_それはすんなりとは納得出来ないけどw 今の情報技術は少量生産少量消費に「も」向くから,「大きい」ことのメリットが相対的に減ってる.けど「大きい物語」に魅かれる性向が変わったわけじゃない
0:34 - 2013年1月15日
政治的テーマ以外にグリーンバーグらが「意味過多」の絵を嫌ったもう一つの理由は、シュルレアリスムへの反発もあるかと。
舞台『市ケ尾の坂』:マジックナンバーの多様と言えば、例えばビアズリーが思い出される。グラフィティのタギングみたいな3本の棒は性器を表してるとか。あと、シュルレアリスムでモダニズムの映画の秀作『人でなしの女』の美術で、調度の柱の数が暗に何々を意味してるといったもの。 pic.twitter.com/r6AIHbBXUT
— 涌 ⚓️歴史画『二月革命』個展9月 (@YOW_) 2018年6月13日
舞台『市ケ尾の坂』:この頃の「意味過多」の芸術の潮流への反発からも、グリーンバーグらの批評スタイルは生まれていったのだと私は考えてるが、
— 涌 ⚓️歴史画『二月革命』個展9月 (@YOW_) 2018年6月13日
人でなしの女から更に発展を示したシュルレアリストが、ルイス・ブニュエルの映画だった。https://t.co/H43MwWieFK
ナショナリズムと芸術カテゴリーとサブカルチャー
歴史画について、以前にも何度か調べて書いてみる機会があった。
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私は自分の作品を構想するにあたって、過去の戦争画や歴史画を目指してるわけではない。さじ加減として、どの程度ケレン味を出すべきか(スペクタクルさ)といった手がかりにすることもある。私も、高校大学と美術史は教わってる以上に、10代の時から政治思想史の本を読むのが好きだったので、歴史画の啓蒙主義とかナショナリズムを人民に認識させる役割だとか、当時としては当然であったオリエンタリズムに対する現代の批判であったり、アカデミズムの啓蒙主義と対抗するロマン派勢とのマッチポンプ関係のダイナミズムであったり、そういった基礎知識はあるし、何よりナショナリズムと表現の問題については、昔から関心を持ってきたことだ。
「アカデミズムの啓蒙主義と対抗するロマン派勢とのマッチポンプ関係のダイナミズム」に関しては、あまりに広範で専門的で、私はここで軽く展開する自信はもたない。
ここで何が言いたいかというと、よく言われる、19世紀のロマン派絵画や社会主義リアリズムや現代の戦争画の類に対する批判は、ごもっともなんだけど、私はまずナショナリストではないし、オリエンタリズムとかノスタルジーとか様々な注意を予めやってるし、プロパガンダ的な表現はやらないことにしているし、その上で、物語性のある歴史画を具象表現で古典技法で描くこと自体について、批判あるとしたら何があるのだろうか、今や制作方法やメディア(媒体)の問題ではなくなったのだ。グリーンバーグらも当時そこまで想定してはいなかったろう。私は以前、絵画という「メディア」ゆえに藤田嗣治を戦争協力に至らしめた、という奇妙な批判を言われたことがある。ところが昨今では、ナショナリズムへの素朴な傾倒表現は、絵画やハイカルチャーの世界から、漫画、世界的潮流でヒップホップ、POPソングといったサブカルチャーの世界に移ったように、さまざまな迷作が散見されるようになった。ゆずやRADWIMPSの例が新しい。20世紀、映画も音楽も舞踊でも戦争協力はあったわけで、前衛芸術においてはこれは学生の時集中的に調べた対象だったが、ファシズムの文化を担った未来派という総合芸術の前衛グループが例にあるわけで、芸術のカテゴリーで何か政治的内容の方向性を規定するのは、ただの事実誤認である。
ファインアートの課題
現代は、エンターテイメントやサブカルチャーと、ファイン・アートを端的に区別することには意味も無くなっているが、一つファイン・アートの方のみ課されているものがあると私が考えてるのは、自分の欲望等について充分に自己分析的があるかどうかという点で、エンターテイメントでの表現においては秀作であるためにはそれが必ずしも無くてはならないものでもなく、しかしファイン・アートとなると、少なくとも(戦後の、公民権運動以降の、)先進国で活動するなら、自分の欲望のありようや好悪、社会観、政治的指向について、所与とせずそれなりに分析を深めたり、関連する学説や創作物、それらの成立したプロセスについてインプットした積み重ねがあるかどうかが、少なくとも私にとっては大きな評価ポイントになっている。これは一つの例だが、あるアーティストで、よく「自分はロリコンだから」と自己規定して済ます人がいて、そのロリコンという指向、嗜好を所与のものとして単純に考えているわけだ。その一方で、現代アートの世界では往往にして、キュレーターも作家も、ステートメント等で現代思想用語を散りばめてあっても、その思想用語と書いた人の認識や制作物の技術面等がどうも釣り合っていないことがままある。情報量の多い少ないが作品の優劣ではないが、インプットしたことを取捨選択して表現に昇華するのは、技術の問題も大きい。絵画では具象でも抽象でも、ことの外、技術に則った表現力が重要な芸術カテゴリーだと思ってる。
最後におまけ・団体公募展系のこと
かつてアカデミズムで「このモチーフやこの主題はこう描くべきだ」と規範化されていたことへの反発の意図であることは理解するが、音楽や舞踏といった他の芸術とは違って、美術ではもはやアカデミズムは世界的に廃れ、「絵画はこう描け」といった規範は存在しないのだが、未だ、20世紀モダンアートの批判の手法で自分が批判されると、妙な感じはいつもある。
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後日さらに書いた記事
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展覧会の感想をTwilogから発掘するシリーズ(四)コンテンポラリーの映像作品から曾我蕭白まで(2013年1月-4月)
『WHAT WE SEE 夢か、現つか、幻か』展 大阪国立国際美術館 2013年1月
大阪国立国際美術館 2013年1月
http://www.nmao.go.jp/exhibition/2012/id_1207134358.html
この時は、アートにおける「ジャンル」というのは、なかなか侮れないなあと思ったでござるの巻。
国内外の映像作品ばかりを集めた展覧会だったのだが、今まで鑑賞した美術展で指折りの見ごたえがあって、記憶に残る良い企画だった。
Tweetでも書いてるが、携帯電話やメールなどが発達してる今だからこそ、国外への出稼ぎ労働者たちが自分のホームグラウンドとの繋がりに、夢見とか虫の知らせとかの霊性の察知に心を寄せてるところへ着目してるのが、観ていてしみじみとくる作品だった。
発表は97年だから、その数年後に911が起きてるが、メディアを巻き込むタイプの劇場型犯罪の先駆け(?)としての旅客機ハイジャック犯罪に着目して映像作品にするという、これは「現代アートの映像」というジャンルならではな表現だったと言えるな。作中、日本赤軍クアラルンプール事件とよど号ハイジャック事件も取り上げられている。
全編公開URL
https://vimeo.com/231411671
Tweetの説明が、一体何言ってんだか、悪文だったが、
テレビ放送の黎明期、フルシチョフの訪米、ソ連の科学技術優位時代といった東西冷戦時代をテーマに、西側世界のアイコンとしてこの作品ではヒッチコックを配していると。ヒッチコックはテレビドラマでも映画でも、冷戦世界のスパイ・サスペンスを色々と製作していている。そして代表作映画『鳥』(1963)をフィーチャーして、所々に烏を狂言回し的にカットアップ。ヒッチコックは、自身の姿を撮った映像を多く残しているから、そこからもカットアップしてきて、歴史的報道映像の中に放り込まれていく。ヒッチコックは英米でアイコンとして相当馴染みが深いが、ケネディやニクソンといった政治家よりもここでは時代の象徴的な扱いをしている。歴史的な映像をモンタージュして新たな作品をつくるというのは、先ほどの『dial H-I-S-T-O-R-Y』も同じ手法だが、効果としてはそれだけで強いものがあるので、良い作品だけ観られたのは良かったな。私がやってる「歴史画」というやつも、これらに通じるやり方なんで、注目した。
全編公開URL
https://vimeo.com/133335917
参照記事:『EIJA-LIISA AHTILA
THE ANNUNCIATION』https://www.guggenheim-bilbao.eus/en/exhibitions/eija-liisa-ahtila-the-annunciation/
これは、グループカウンセリングも併せてという印象だったが、あるワークショップで数人の女性が、受胎告知を受けたマリアの心情などを語り合い、それぞれが家に持ち帰り反芻して、皆で劇として演じてみる。篤い信仰の背景があってこその作品だと思う。撮影もきれいだったし、丁寧に製作されていた。
出展作をDVDにまとめたの、ギャラリーショップで販売してなかったか、またみておこ。
『美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年』展
東京国立近代美術館 2013年1月
東京国立近代美術館の所蔵品からの企画展
http://www.museum.or.jp/modules/im_event/?controller=event_dtl&input[id]=79085goo.gl
藤田嗣治の戦争画については、この後調べる機会があって、こちらにも書いた。
この上京の時に東京国立博物館にも行ってるが、東博のレビューはこちらにまとめてある。
ボストン美術館 日本美術の至宝展
大阪市立美術館 (2013年4月)
http://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/boston
部分拡大
参照図は両方共部分のみ
では今回はこの辺で。また来月更新、いつまでも続く。
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