蠅の女王

小倉涌 画家 美術家 アーティスト 歴史画

本の表紙デザインをしました。 『力動的集団精神療法―精神科慢性疾患へのアプローチ』

力動的集団精神療法―精神科慢性疾患へのアプローチ

力動的集団精神療法―精神科慢性疾患へのアプローチ

 静岡大学の精神科療法の研究者でid:you999さんこと太田裕一先生から、共著『力動的集団精神療法―精神科慢性疾患へのアプローチ』の表紙デザインのご依頼を頂きました。ただいま発売されています。
おもて表紙

裏表紙



 太田先生のはてなダイアリーでの紹介記事はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/you999/20100331/p2
 私の方での紹介が遅れまして、すみません。。
 太田先生からは、また来年に出される翻訳書の装丁もご依頼頂いています。

絵について・本について。

 力動的な精神療法(Dynamic Psychotherapy)も、集団精神療法もイギリス,アメリカでは歴史があるけれど日本では未だ実践も理論もあまり広まってないそうで、私も今回の仕事で初耳だったのですが、絵を描くにあたってネット上の資料を見たり、太田先生から以前のレポートを送って頂いたり、『集団精神療法ハンドブック』という本を読んだりしました。
 特に太田先生の書かれた、本文にも含まれている、精神科長期入院患者さんを含む病院内でのグループ療法の臨床リポートが印象に残って、そこから今回の絵を起こしていきました。パーソナル障害や統合失調症など長期にわたる入院・通院の患者さんは、その間、周囲の人間関係の繋がりが途絶えていたりすることも少なくなく、また、「発症の過程で外傷的な体験をしているだけでなく、過去の生育歴や発症の過程で,周囲から疎んじられ,家族から見放され,心理的に重要な人物を失うという体験を繰り返している」(太田先生)、そのため、薬物での安定を基礎にして、グループカウンセリングによって情緒的な交流を体験しそこでの対人関係を築くことで治療が行われていきます。
 ご依頼頂いた時にまず、「力動(Dynamic)というのをテーマに描いて下さい」と言われました。この「力動」というのはサイバネティクスに関係する概念なのですが、セラピーということなので、サイバネティクスというよりも人間的な発想で「暖かみ」を出していこうと考えました。通常決まった部屋でグループカウンセリングを行うとのことですが、絵では、春の晴れた日にイレギュラーに屋外に椅子を持ち出してセッションをしている、というイメージで描きました。


 ちなみにサイバネティクスも前々から興味あったので、『サイバネティクス学者たち―アメリカ戦後科学の出発』という本も買ったのですが、作品展制作がこの春からおしていまして、「また来年読もう」と数多くの積読本の中に埋もれたままになっています(汗汗