蠅の女王

小倉涌 画家 美術家 アーティスト 歴史画

テンペラ油彩の小品



右のデッサンは、見出しのテンペラ作品ではなく、もちろん鉛筆です。
今回は先日、注文制作で小品作ったので、紹介することに。
オーソドックスな作品ですが。
亡くなられたご家族の思い出の写真というのを基に描いたものです。実際は集合写真だったのですが、絵では周りの人は省いて、というオーダーでした。
この小品はテンペラと油彩の混合技法なりぬ 
テンペラ絵具とは、卵黄のみもしくは全卵と、樹脂と水とを混ぜ合はせエマルジョンにせし溶液を、顔料の粒子のつなぎにするといふものなり そは半水溶性半油性の性質を持つ
ただし乾ひた後のテンペラ絵具層の被膜は、油彩、アクリル絵具、そしてアラビアゴムが添加された水彩絵具などとは違ひ、堅く柔軟性が無いといふ難点ありけり
よつて、テンペラを使ひたる際は、キャンバスや紙上ではなく、厚みある板に描かれんこと必定なりぬ
ルネッサンスまでの古典的な技法として、テンペラ・油彩の混合技法が知られています。今回のは、「正統な古典技法」というのとまた違うのですが。
制作過程を披露します。まず、表面をやすりで平明に整えた板に、水性(吸水性)の下地材(クサカベジェッソか、ムードン・膠など)を真っ白に平滑に塗って、そこへ天然緑土(テールベルト)の顔料粉末をテンペラで溶き、刷毛目をタッチのように残して素早く全体に塗ります。*1この下塗りのグレーを最後まで活かすことで、透明感ある爽やかな色彩の画面に仕上がっていきます。
…さて美術学部の洋画科出た人なら、ここで誰を手本にしているのか、ピンとくる方もいることでしょう。(ルーベンスですね*2) わたしは(これでも)デザイン学科出なので、混合技法も大学卒業してから、テキストを読み込んでなんとかかんとか独習した、というまでです。


緑土をひいた後、油絵の具の黄土(イエローオーカー)で明暗、それからテンペラの白で雪を重ねていく、といった具合。ここまでが、過程の前半段階(上画像)となります。
前半段階で色を多様に用いず、最後の方で鮮度の良い色を置くだけで、色彩的には充分効果がみられます。

完成した画面 左端中央部分のアップ⇒



スゴイ絵カキサンラシイえんとりぃニ、今日ハナッタネ。

*1:下地材塗る前に膠で目止めしたり、麻布を板の表面に貼ることで補強したり、といった手順もある。詳しくはテキストを買うか、わたしに質問投げてみて下さい。 今日8/22、google検索で「古典技法 混合技法 テンペラ」で見ると、このページが他所の専門サイトを差し置いて、一番に出てきて、たまげた。(はてなダイアリーって、とりあえず検索上位に上がるようになってるから…) ということで他所で、絵具学や手順を専門的に研鑽してるサイトってちゃんとあるから、そっちに行ってね(ぉぃ 微力ですが参考図書も挙げておく事に。わたしが見た中で、手に入りやすくて解説も丁寧だった本がこちら、『絵画技術入門―テンペラ絵具と油絵具による混合技法 (新技法シリーズ)』。廃盤になった古いテキストは、図書館の充実している美術館に行けば、閲覧、コピーできるかと。

*2:ルーベンスは実際には緑土(テールベルト)を使ってなくて、彼の灰緑色の下塗りには白顔料に炭の粉など混ぜて作ったグレーだったのでは、と解説されてたのをどこかで読んだ。