蠅の女王

小倉涌 画家 美術家 アーティスト 歴史画

福田歓一の本

ついでに。
ハイエクでモンモンしてた間、理解のための参考で読みだしていた福田先生の本。でもこっちの方が、正直わたしの趣味です。
次回(http://d.hatena.ne.jp/YOW/20070719/p1)には、福田先生の本を参考にしつつ。ハイエクが指摘した「対民主主義の法の支配」の理解をば、なんとか書きたぃ。
とりあえず買った本↓

 ★
政治学史
東大での講義録からまとめられた内容で、でも普通に読みやすい。知識が高校の社会科レベルからでも、興味さえあればだが、読めるよ。
古代から近現代まで各章に区切ってあるが、最初のページからでなくって、途中の興味ある章から読み出してもイケそう。
4月25日ん時、たまたま見つけた記述を書いたのがきっかけで、その時にコメント欄で本を教えていただいた。
あの時なにげにアレを書いてなかったら、そのまま福田歓一という学者を知らずだったと思う。
痛快!憲法学―Amazing study of constitutions & democracy(p.50)で、
「(福田先生政治学史の)講義の難しさたるや、東大法学部の講義で何百人も聴講生がいたのに試験を受けたのはたったの三人だったという逸話がある」
というのをメモ程度に紹介したわけですが。
本が難しいのか、講義の事を言ってるのか分からなかった。本読んでるだけのと、講義出て課題したりするのとは、そりゃ全然違うわな。(舛添要一なんか普段からして、いかにも単位とれんかったクチじゃないかい)
本は、普通に読み易すかったです。


一般向けの新書は既に読んだ。手に入りやすいのは、こっちだろな。


 ★
近代民主主義とその展望 (岩波新書 黄版1)
 (↑岩波新書 黄版)
黄版での内容は、西洋史での「民主主義のそもそも論」とか。代理制の事とか宗教革命の民主主義との関係、など。
アメリカ建国時を書いた部分がわたし的には一番面白かったです。
ハイエクの書いた著作でも、アメリカ史の話が一番読ませてくれた。


 ★
近代の政治思想―その現実的・理論的諸前提 (岩波新書 青版 A-2)
 (↑岩波新書 青版)
これは、中世での地域の王国(≠国家。国家以前)だったのがどのように「国家/国民」へと変容してきたか、とか。
あと、近代市民社会を生むきっかけになった「絶対主義」王制についてとか。あとルソーを、先生的には、ワリと推し気味。(わたしは、ルソーはあんまり…)


小室直樹氏『痛快!憲法学』等は、ほぼ、福田先生の教えをベースに、作られたことが改めて分かった。
小室氏は、時々「○×博士のはすごく難解な本だが〜〜」みたいな言い方されるけど、どうも、それが必ずしも本当に難解とは限らないっぽい。
教職にいた人だから、経験的に「あるタイプ」を想定して「こういう子には難しいだろう」って印象を一般化して、言ってるんじゃなかろか…(「深い分析」が素人にも「難解」であるとは限らないとわたしは思う)
もしかして、それって「『物語性』に対し、あんまし感応しないタイプ」みたいなの?っとかって。←「オタク論」的な理解だけど。だとしたら「東大法学部生うんぬん」の逸話も、腑に落ちるんだけど。
これはあくまで、わたしみたいな「観客席」にとっての、「政治思想史」だけど、
より深く面白くなることはあっても、ある程度以上はそんな難しくなりようがない分野なんではないかと・・・。(小説や映画見るのと同じで)あくまで観客席側にとっての、だからね!(そりゃ研究者や修論される方はめさ大変ですもんね)


〜 〜 〜 〜 蛇足 〜 〜 〜 〜


機会にどれか読んでみよーかな、となんとく思ったひと。「文の読みやすさ」だけで本の比較してみると。(※ 簡単〜〜〜難しいの比較とはちがう)
 
やすい←                                 →にくい
 小室直樹 ≧ 福田歓一、ハイエク ≧ 橋本努氏 > 丸山眞男 > アガンベン



小室先生のは福田先生のよりも「強気な表現」を用いる。それで、より印象に残りやすい。
橋本氏は経済学の先生でした。すんなりとまとめられてありましたが、わたしが経済学よく知らない、という理由でこの位置。
丸山は、内容は難しくないけど*1、センテンスが長くて、まるで講談師みたいな独特の抑揚があって、クセが強い。そこが面白くて愛読しだす人も多い。
アガンベンのは、形而上学の考えが予め必要かも。(苫米地英人さんは、美術の人は形而上学理解は得意っぽいんじゃないか、とおっしゃってた)

*1:戦中の20代に書いたのは旧仮名づかい、旧漢字だけど。それでも、読みにくいというレベルではなかった。現代文と大して変わらない。