蠅の女王

小倉涌 画家 美術家 アーティスト 歴史画

ぬこポートレートと、秘宝の絵本


紙に水彩絵の具、パステル


 我が愛猫の「麦」。わたしの大島弓子脳では、ソバカスのパッと散った美少女に見えている。
 更新の為に描いたのだが、あと本文は、思いつきで今回は、好きな絵本や絵本作家の紹介を書くことにした。
 きっかけは先日、絵本の事で、id:contractioさんとTwitterで少し話のやりとりがあったのだった。お子さんがおられるので、私の絵本についての書き込みをご覧になったのだった。



 私の母が絵本が好きで、子供の頃から与えられてきていた。今も福音館、偕成社、童心社の絵本が2百冊ほど手元にある。親戚の子供らが来ると私が読み聞かせなどもする。 
 母はお行儀良さげな内容・絵の本を好んでいたが、私は、怖そうなのやあるいは豪快な画風や構成のものがお気に入りだった。
 以前「好きな映画のジャンルを一行で表現するバトン」するというエントリー(「絶叫機械+絶望中止」さん)があって、はてブでわたしは、
「身もフタもないようなもの。それが開放感よりも不安感醸してる映画とか。当初の目的があれよあれよとドンドンずらされて、ズタボロになるまで振り回されてしまう幻想や犯罪ものとか。」
(一行じゃなかったけど)回答寄せた。こんな傾向がすでに絵本の好みに出ていた。これが原点というのかどうか分からない。絵本なんて字を覚える以前から見ていたので、こうして振り返ると改めて不思議に思う。



  ● 
田島征三の『だいふくもち』
だいふくもち (こどものとも傑作集)

だいふくもち (こどものとも傑作集)

 話も怖いんだな。民話のようだが、小豆食べさせると小だいふくもちをポコポコ生んでくれる、喋るだいふくもちを拾ったオッチャンが、お金儲けして、破滅させられ、とうとう身体も消滅する、というストーリー(笑)。 絵は、トーンが暗くてタッチはまるで道端の犬の乾きかけウンチのようにバッチィくて(と当時は感じていた)荒々しく、そういうとこがまた子供ゴコロにはタマランかった。だいふくもちが小だいふくを生む場面など、目鼻もないただの白い丸だけど、痰を吐くように「ブーーッ」と生み捨ててるって感じ。「おもち」のあたたかな幸福なイメージから離れて、凶暴そうなだいふくもちであった。



  ● 
柳生弦一郎

 ボローニャ国際絵本原画展とか時々見に行くが、こういうヤンチャな画風でなお且つ字との・紙面の構成も巧い、といのはあまりお目にかからないかも。おどけたペンタッチ。使用してるペンは、竹ペンなのかなあ?*1 たぶん原稿は墨による制作で、印刷で赤白の2諧調にされている。印刷文字は黒だが、人物の動きに沿ったレイアウトになってて、字がひっくり返ったり、字間でリズムを取ったり。語りと主な台詞は印刷文字で、周辺の人物のつぶやきや、作中のタブロイド紙記事情報が、赤色の手書き文字によって絡んでくる。
 児童向け絵本月刊誌『たくさんのふしぎ』で出た『ゆうれいをみる方法』という本があって、わたしも親戚の子らも最も愛着持ってる。表紙のサブタイトルがグッとくる。

「この本は、かわいいキミへのキケンなプレゼントです!!」

 高学年以上なら自分で読むが、
「人間てさ、自分が死んだ後幽霊になりたいって欲望するのに、自分以外の人の幽霊は怖いのね、矛盾だよねえ」
というよなアドリブ出しながら進行すると、小さい子でも食いつきがすこぶる良い。ここでは、全身麻酔や魔法キノコによる幻覚の説明も出てくる。残念ながら、この『ゆうれいをみる方法』は廃盤になっており、入手はおそらくきわめて困難(ぉ。モノ自慢だけかぃ)
 同じ『たくさんのふしぎ』で1988年の絵本で『100まで生きる?』というのは未だ手に出来るようだ。

100まで生きる? (たくさんのふしぎ傑作集)

100まで生きる? (たくさんのふしぎ傑作集)

 こっちのサブタイトルは

「死ぬとぼくたちのからだはどうなるんだろう?」

というように、この作家さんは「生と死」を扱うのが好きだ。わたしも好き。今見ても、内容的にも成功してると思う。
あと、絵の作風が内容によってなのか時期によってなのか、変わっている。上二つは荒々しい線描なのだが、『かがくのとも版 きゅうきゅうばこ (かがくのとも絵本)』など「からだシリーズ」になると線から「面的」な、整理された絵になる。これはこれで可愛い絵と思うけど、線描の時のタッチの方が、わたしは好き。




 ● 
『おはなしグリム』ウエルネル・クレムケ(Werner Klemke)
おはなしグリム

おはなしグリム

  
 日本での初版1965年のものがうちにあった。上のあかずきんの絵が当時の表紙。現在は違うイラストになってる。旧表紙の方が好きだなあ。『おはなしグリム』は今も大のお気に入り。決して几帳面な子ではなかったのに、少しのシミ以外折れも無く比較的きれいに残ってるのが、自分の事ながら可愛いものだ。
 画家のクレムケという人の仕事はこの後、あまり日本では出されてないみたいが、ドイツ語のWikipediaで見ると色々功績が紹介されていた。残念ながら既に1982年に亡くなっている。⇒http://de.wikipedia.org/wiki/Werner_Klemke
 『おはなしグリム」の絵は、白黒単色刷りの木版画で力強く鋭いタッチ。素朴で、クラシックな感じがある造形。「少し陰鬱さ」もあった。いかにもドイツの奥深い森って感じする、と勝手に考えていた。かつ、キャラクターの造形・表情などは素朴で愛らしい。イメージ検索かけると後年の作品では割と明るいほのぼのな内容の絵が多そうだが、若い頃の作風は表現主義だったり、ビアズリーのような装飾的な版画も出てくる。また、絵巻絵のように、見開き画面で起承転結を描いたページがあって、それが楽しくて好きだった。
 お話の方は全体にいわゆる「ほんとうは怖い」版。可愛い中にもグリムらしい「暗さ」が絵にも表されている。



  ● 
東君平
くろねこかあさん (幼児絵本シリーズ)

くろねこかあさん (幼児絵本シリーズ)

 絵描きにして童話作家。東君平の絵本はこの一冊しか持っていなかった。
[rakuten:bunbougu-shibuya:1441075:detail]
 「くんぺいたぬき」、カワエエ〜!この機会に他のも買う。
 手法はいずれも切り絵なのだろうか、『くろねこかあさん』は白黒単色の絵、というより、黒い紙を切り出した「ポジ/ネガ」を生かしたアイディアで成り立ってる。黒と白のバランスが美しい。文字も君平のおそらく切り出しによるもので、可愛い。言葉は数え歌のようにリズムを踏んでいる。
軽井沢 三笠茶屋くんぺい:http://www.kunpei.com/
くんぺい童話館:http://www.docca.net/kunpei/



 今日はこの辺で。またいつか他のも取り上げてみます。

【追記】
「美術検定試験」の検索で来る人が増える季節になった。わたしは一級受験します。(と書いておくと自分に追い込みかかる)