蠅の女王

小倉涌 画家 美術家 アーティスト 歴史画

独習のための連想ゲーム落書きノートの法 〜情報カードを使って(京大式カード、一ツ橋式カード)



今日は、わたしの偏愛するノートの取り方のハウツー。それは大学ノートではなくルーズリーフでもなく、「京大式カード」と呼ばれるB6サイズで2穴開きのカードを使用するというもの。
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私の書いた情報カードの読書ノートうpしていってます。:http://f.hatena.ne.jp/YOW/%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%88%E5%A7%94%E5%93%A1/

落書き絵>>色による区分け>>文字情報

とりあえず、わたしの秘蔵ノート例のうp。↓まずは初級バージョンから。

昨年から美術検定(旧アートナビゲーター検定)というのを受けていて、美術史の勉強で、いろんなアーティスト活動や作品や様式のことをメモってる。
美術関連じゃなくても、文字情報のみだと自分で書いてて、自分で読む気がしなくなってくるもんだったりしないか?
図例での「落書き」よりもっともっと簡略で下手で良いから、挿絵や漫画を添えておくだけで、「後で読み返す」率が格段に違ってくる。せっかくメモっても、「あとで読」みもしないんじゃ記録する意味がないよ。

フェイバリットな点。

● 
多くの文具店では京大式ではなく、単に「情報カード」という商品名のを置いてる方が多い。
いつも行く文房具屋さんで贔屓して買ってるのは「一ツ橋式情報カード」(一ツ橋ノート株式会社)という商品だ。写真のコクヨのと違って、罫線が薄いグレー色。個人的に、青線よりグレー線の方が使い勝手が良いように思うが。
● 
横線の数は12本(8.5mm幅)か、それより行数少ない(9mm幅)のを選ぶと、良い。
というのも、後記でもするが、「文字情報は節約する」のが、情報カード・ノートを上手く使うコツ。
● 
葉書程度に厚い紙なので、外でもメモれる。
手芸になら、布切れ等を貼っていく使い方も出来る。また、スクラップブックのように新聞や雑誌記事をそのまま貼ってしまうのも良い。
ただし、一枚に一情報が鉄則。裏面もなるべく書き込まない。(図例では裏へ「つづく」としているが…。裏を使うのは反則くらいの気持ちで。)
● 
A4や大学ノートと違って出かける際、数枚だけバッグに携帯し易い。
ファイルなので、要らなくなった項は外して捨てることが出来る。
● 
情報カードにはそれ専用の2リングのファイルが売られているので、それに溜めていく。
コクヨ パイプ式ファイル B6横 2穴 500枚収容 青 フ-E658B       
〜一番最後の小見出しで、もう一度ポイントおさらいを記します〜



ここから、仮に「落書きノート」と呼ぶことにする。
「落書きノート」に向いてるタイプというのがあるだろう。

  1. 落書きするのが好きで(いうまでもなく)、
  2. 普段、コミックや映画や小説やドラマをよく見ている人。
  3. ブログやブックマークをつけるのが好きな人。

こんなもんかいな。

『超整理術』の人・ 野口悠紀雄氏は、
「きょうび、京大式カードなんかもう使えんわ、メモの蓄積ならデジタルデータっきゃない、常識的に!」(YOW意訳による)
と、情報カードのコトを全否定なさってたのを見てしまった。。(情報カードによるノート法を紹介している書籍はこちら。*1
わたしゃ、紙媒体の柔軟性を、人類はまだまだ捨てきれないと思うんですがの。iPhoneとかは確かに素敵ですが、長時間集中して、となると「紙で読む・紙に書く」方が、人間の脳には向いてるんではないかいな。義体化電脳化が可能になってようやく、紙に情報蓄積しなくなるんじゃないかいな。
紙媒体を侮るねぃ。

では、書き方。

下の図例が本格的な「落書きノート」。勉強の内容記録に、自分の「連想ゲーム」(もしくは感想)を1枚の中に盛り込む方法、というもの。連想ゲームは、アニメや映画のシーンからでも、なんぼでも。こうなると半ばネタ帳な読書ノート、となる。

まず特徴として、

  1. カラーペン、カラーマーカー、色鉛筆(10色くらい)を多く使う。色ペンは、ゼブラの「SARASA CLIP」というのが使い心地よくて気に入ってる。6色は使ってる。
    1. [rakuten:pltbv:362881:image:small]
  2. 文字情報はなるべく節約して書く。(はてなブックマークのコメント欄のように!)文章状で写すより、なるべくコマ切れの文節で「リスト形式」「アンダーライン」の形式で書く方が良い。
  3. 挿絵を必ずつける。落書きで良い。
  4. 矢印はシャーペンでなく、カラーマーカーで書く。



【A】 タイトルの記入
タイトルは、簡潔に・且つ的確なネーミングを目指す。ただし。人の脳は元来飽きっぽく出来てるんじゃないかい。
メモの数が増えれば増えるほど、人間の知覚っていう奴ぁ、惰性でやがてこうなるのだ。↓


1番先
に眼が行くのは、このタイトル部分じゃなく、真っ先に落書き絵の方から、になっていく。また、絵無し(文字だけ)のより、絵付きのメモの内容はよく覚えている。
2番目
に眼が行くのは、左肩の水色マーカーで縁取った「『親切』なデータベース」という箇所。WEBデザインの基本でもある左肩の法則。
3番目
に目が行くのは青色緑色による文字情報。
じつに、タイトルへは、4番目か5番目ぐらいでしか、着目しなくなる。


タイトル文字は、決まった色のペンで書く。わたしはタイトル(とサイド【C】)専用には、サーモンピンクのペンを愛用している。(画像では色合いが変わってしまってるが)
赤色や、紫がかったローズピンクよりも、サーモンピンクの方が紙映り・眼映りが良いと思われ。
そして、タイトル字文字(とサイド【C】)での色は、本文では使用しないように。色で情報整理・区分するなればこそ。


【B】 メモった時の年月日
これは絶対絶対記入必須。メモ数が溜まるほど、目当てを探すのに、タイトルやメモの中身よりも時系列の方があてになってくる。『超整理術』で 野口悠紀雄氏もかつてそう書いていた。
紙媒体の弱いところは、センテンスで検索・探し当てるのが不向きなところ。はてなブックマークだとタグで検索できるしGoogleでも探せるし。
時系列が検索のあてになるわけだから、専用ファイルに納める際も、時系列を遵守するのが鉄則。不要なのを抜いて捨てるのは自由だが、
ファイル内もファイル間も移動させてはならない。同じ日付け内なら移動可。


【C】 書籍などの情報と、関連性付けたい他のメモ
ブラウザやブログでいう「サイドバー」にあたる。
● 
情報カードとして売られている中で、横罫線しかないのがある。左側にタテ罫線も入ったのを買った方が便利。
この「サイドバー」で、一番上位に、本なら読んだ本のタイトル、著者名、ページを書いておく。(映画やコンサートの覚え書といった他の使い方をする人もいるだろう)
この時のは、ウィリアム・ギブスンの小説『あいどる (角川文庫)』で登場する、「音楽についての膨大なアーカイブを貯えてる人工知能」であるキャラ「音楽マスター」のコトなんだが。
● 
そして、「関連付けたいメモ」の場所や、WEB記事などを記入。
メモの位置は、ファイル名と日付けとで指定する。
図で見えにくいが、ファイルの巻の単位について、「1巻、2巻、」とはネーミングせずに、「1合、2合、」「1串、2串、」としている。
書籍名や本文にて、重複するような単位を使うのは避けているからだ。(「本」も「枚」も避けている)
ファイルの背表紙に、勉強関連の分はお釜の絵を描いて「1合・・・」、美術関連のはお団子の絵を描いて「1串・・・」、ネタ帳や制作の記録ファイルには花火のシールを貼って「1火・・」という具合。
単位名など勝手に造語すれば良いのだ。他に使えそうな画数が少ない漢字は、「犬」「甲(猿の絵を)」「化(オバケ)」「毛」など。


【D】 本文
これは前述の1、2、3、4のリストを参考に。コマ切れに、文字は節約、色は多色使いに。3色以上が理想。
司馬遼太郎(の記念館の様子)や攻殻機動隊のシーンなどへ、連想ゲームが好きなようにつながっていってる。「アースアート」、ロバート・スミッソンについては、ココ*2
思いつきを好きに書き留めるのには、紙媒体がやはり都合が良い。また、絵付きだと、文字のみで説明するよりもコンパクトに表現できるのが、お分かりになりますかの?
↓ほぼ実寸画像?  

こっちの図例では、大きく二つのトピックで書いてある。
記録内容は、大澤真幸の『ナショナリズムの由来』の読書ノート。
ヨーロッパの伝統的封建社会・宗教共同体から逸脱したアメリカ社会(市民権)の「一見、寛容さ」というものの不透明性について、
言及されてた箇所をメモ。
冒頭に、水色マーカーの※印で区切っている。上が、移民社会アメリカの、「ピューリタン的法人(会社)社会」の、寛容さの裏腹にある「逆立ちした不寛容さ」について。下の※印が、ヨーロッパ封建社会の不寛容さが逆に、身分制度あるゆえの透明性について。
上のアメリカ社会と下のヨーロッパ社会とを、対比出来るようにまとめている。
大澤真幸は実際「難関大学受験」という比喩で示してたので、わたしも「自由の女神」が受験参考書を持っている絵を描いてる。
こんな一コマだけでも、描いてあるのと無いのとでは、あとあとメモとしての使い勝手が段違いなのだ。絵が無いのより、絵がある方を、心理的にまず参照してしまうものである。
この図例ではほんの1ページの記録だが、時には10数ページ分のまとめをB61枚で納めてしまうことも。

ポイントをまとめると。

  1. 読書カードとしては、B6(128×182mm)の大きさで、横罫線は12本以下(幅8.5mm以上)、左サイドに縦の欄があるタイプがお薦め。(洋裁メモとか料理カードなど、使い方によっては方眼の方が良いとか、あるでしょう)
  2. 色ペン、色マーカーを3色以上は用意。色鉛筆も何色もあった方が良い。ペン箱は、わたしは100円ショップの薬・釣り用具用の小物入れ(持ち手付き)にガバッと入れてます。外出時はシャーペンとマーカー1本だけだけど。図書館に籠るときは、「薬箱」ごと持ってく。
  3. 必ず絵を付ける。下手でもベタで下品なダジャレ漫画でも。絵を描く余裕がない人は、シールを多用しても良いかと。
  4. 記録した日の年月日を必ず記入。そして、日付け順とファイルの巻数を動かさないようにする。サイドバーでの関連づけが、時系列に頼っているため。
  5. タイトルとサイドバーの文字色と、本文の文字色の使用とは、重複しないように。
  6. 本文は、コマ切れの文体で。アンダーライン、リスト方式で書いていく。
  7. 1枚につき1情報まで。これは、新聞記事などのスクラップする場合は特に。

*1:

知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)

*2:Wiki『ランドアートとは』参照。アースアート、ランドアートは、現実世界では、一時的な「仮設」展示でその後「撤収」される。そこでスミッソン自身は予め、作品がデータベース上に「登記される」ことを意識した作品発表を行う、という強いモダニズムの「逆立ち」をあえてしている。不動産というのが住まれてなくても「登記」上にデータがあれば、金銭のように財産として流通するように。