蠅の女王

小倉涌 画家 美術家 アーティスト 歴史画

展覧会の感想をTwilogから発掘するシリーズ(四)コンテンポラリーの映像作品から曾我蕭白まで(2013年1月-4月)

『WHAT WE SEE  夢か、現つか、幻か』展 大阪国立国際美術館 2013年1月

大阪国立国際美術館 2013年1月
http://www.nmao.go.jp/exhibition/2012/id_1207134358.html
 この時は、アートにおける「ジャンル」というのは、なかなか侮れないなあと思ったでござるの巻。

 国内外の映像作品ばかりを集めた展覧会だったのだが、今まで鑑賞した美術展で指折りの見ごたえがあって、記憶に残る良い企画だった。


現代アート展で映像作品がいくつもあると、1日ではとてもじゃないけど消化出来ない問題。

↑饒加恩作品『レム睡眠』2011年。インタビュー動画があったので貼っておく。展示ではスクリーンが3枚並んでいて、それぞれ別の人が写っていて、入れ替わり立ち替わり色んな人が登場する。全部観るとすると1時間弱はかかったかもしれないが、飽きずに観てられる内容だった。
 Tweetでも書いてるが、携帯電話やメールなどが発達してる今だからこそ、国外への出稼ぎ労働者たちが自分のホームグラウンドとの繋がりに、夢見とか虫の知らせとかの霊性の察知に心を寄せてるところへ着目してるのが、観ていてしみじみとくる作品だった。



↑Johan Grimonprez、『dial H-I-S-T-O-R-Y』1997年
 発表は97年だから、その数年後に911が起きてるが、メディアを巻き込むタイプの劇場型犯罪の先駆け(?)としての旅客機ハイジャック犯罪に着目して映像作品にするという、これは「現代アートの映像」というジャンルならではな表現だったと言えるな。作中、日本赤軍クアラルンプール事件とよど号ハイジャック事件も取り上げられている。


全編公開URL
https://vimeo.com/231411671



↑Johan Grimonprez『Double Take』2009年
 Tweetの説明が、一体何言ってんだか、悪文だったが、
テレビ放送の黎明期、フルシチョフの訪米、ソ連の科学技術優位時代といった東西冷戦時代をテーマに、西側世界のアイコンとしてこの作品ではヒッチコックを配していると。ヒッチコックはテレビドラマでも映画でも、冷戦世界のスパイ・サスペンスを色々と製作していている。そして代表作映画『鳥』(1963)をフィーチャーして、所々に烏を狂言回し的にカットアップヒッチコックは、自身の姿を撮った映像を多く残しているから、そこからもカットアップしてきて、歴史的報道映像の中に放り込まれていく。ヒッチコック英米でアイコンとして相当馴染みが深いが、ケネディニクソンといった政治家よりもここでは時代の象徴的な扱いをしている。歴史的な映像をモンタージュして新たな作品をつくるというのは、先ほどの『dial H-I-S-T-O-R-Y』も同じ手法だが、効果としてはそれだけで強いものがあるので、良い作品だけ観られたのは良かったな。私がやってる「歴史画」というやつも、これらに通じるやり方なんで、注目した。

全編公開URL
https://vimeo.com/133335917


↑Eija-Liisa Ahtila、『受胎告知』2010年
参照記事:『EIJA-LIISA AHTILA
THE ANNUNCIATION』https://www.guggenheim-bilbao.eus/en/exhibitions/eija-liisa-ahtila-the-annunciation/
これは、グループカウンセリングも併せてという印象だったが、あるワークショップで数人の女性が、受胎告知を受けたマリアの心情などを語り合い、それぞれが家に持ち帰り反芻して、皆で劇として演じてみる。篤い信仰の背景があってこその作品だと思う。撮影もきれいだったし、丁寧に製作されていた。






2本合せて2時間半くらいのを再度観たのね。


出展作をDVDにまとめたの、ギャラリーショップで販売してなかったか、またみておこ。



『美術にぶるっ! ベストセレクション 日本近代美術の100年』展

東京国立近代美術館 2013年1月
東京国立近代美術館の所蔵品からの企画展
http://www.museum.or.jp/modules/im_event/?controller=event_dtl&input[id]=79085goo.gl



藤田嗣治
アッツ島玉砕』
1943年


藤田嗣治戦争画は2006年、京都国立近代美術館での生誕120年の回顧展にて観てるのだったが、どうやら私にはあまり印象に残らなかったようで、この2013年の時、初見だと思って観ている。2010年以前はあまり上京する機会もなかったため。

 藤田嗣治戦争画については、この後調べる機会があって、こちらにも書いた。

● 
絵画で正史はどう描かれたか -藤田嗣治の戦争画の場合


安田靫彦 1940-41年 『黄瀬川陣』




安田靫彦の大作とは、この頼朝義経兄弟を描いた歴史画のことだったが、後年、東近美での回顧展でもお目見え。繰り返しになるが、中世世界のテーマで手法は王道でありながら、強く近代性を感じさせる名作だと思う。ところで「一体、その近代性って何だw」と追究したいところであるが、別に便利な言葉として使ってみたつもりはないけど(いや結局は便利に使ってるか)いわゆる「テイスト」の問題もあるな、うーーーん難しくてとてもじゃないけど、ポッとは書けないw 人物の内面描写がとかね、背景の処理が、とか、かなーり色んなことは言えそうな問題だけど。私たち美術の専門家が「中世的」「近代」と形容する時、「テイスト」や共通の特徴を感覚的に捉えているんだろうけど、これを言語化するのは大変だな。美術の近代性(〇〇性ってつけるのもあまり好きじゃないけど)について整然と語れる人なんて、批評家にも研究者でもめったにいないだろう。てきとうな問題提起らしきものを投げただけで、この話は終わるのだったw まあ、しっかり分析された本があれば、読むけど。


画像のデジタルアーカイブでもあれば指し示せるのだが。版画のアジテーターというと、パリの五月革命なんかも思い出す。




ちょうどその前日に、東京駅近くのカフェで相互フォローの詩人の方と「ポストモダンでの大きな物語の終焉」といった話題で長話をしたことにかこつけて言ってる。
大きな物語とか、これも便利な言葉で、使うのははばかれるが。


 この上京の時に東京国立博物館にも行ってるが、東博のレビューはこちらにまとめてある。

● 
東京国立博物館 トーハク 感想ツイートまとめ その1
● 
東京国立博物館 トーハク 感想ツイートまとめ その2



ボストン美術館 日本美術の至宝展

大阪市立美術館 (2013年4月)
http://www.osaka-art-museum.jp/sp_evt/boston



大阪人は親しみこめて「天王寺美術館」と呼ぶ。いつも写真と印刷が見やすいなという印象。
軸物は、作家とは別で、表装の仕事も見ものである。雪舟の作品でも、後年の職人によるだろう表装がいまいちだなと思ったことがあった。ちなみに、2017年の美術史学会へ聴講に行って、京都の老舗の表具会社の会長さんの講演を聞いて、フィーバーした連続ツイートがこちら。↓


吉備真備大臣入唐絵巻、12世紀後半の作、紙本四巻。巻第一と巻第二の、部分だけ画像上げておく

巻の全体の構成、構図のことでdisってて、人物だけアップで見ると、愛らしくユーモアがあって見所もあるのだった。↓

部分拡大


下村観山の何と比較してたこう言ってたのか、不明w 今図録を見返していると、大変に見事な群衆図、よくできた構成じゃないと思えるのだが、絵画は、実際に観た時に受けた印象の方を信用することにするw 写真や印刷でなく実物観ると、違うものを感知するもので。
平治物語絵巻 三条殿夜討巻 13世紀後半作 紙本
参照図は両方共部分のみ






この時観たのは十六羅漢図の内の4幅。伊藤若冲は、世間では華麗な彩色画のイメージが強いかと思うが、この羅漢図もあまり気負いなく描かれてるかと思うが、こうした水墨画も大変良い。関西のミュージアムではちょこちょこ観られる。ちょっと手すさびで書いたような水墨画でも、一目で良いな、巧いと思わせる表現力や技量が若冲にはあって、近世の画家の中でも傑出してると思う。



この時の展覧会で目玉だったのは、蕭白。鬼の図というのは『朝比奈首曳図』。いずれも、人物や筆に躍動感があって、構成の巧みさも唸るものがあった。

1763年の、全長10m超の大作。みずみずしく、おおらかで、どこか若者らしい良さがあって、ほんと良いもの観られた。こういう作品に対峙した時、ちょっと作者と話もできたような気がして、良いもんです。






では今回はこの辺で。また来月更新、いつまでも続く。
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